機械学習を用いたテンプレートベースの結晶構造予測
2022ポスター 草場
任意の化学組成によって形成されるエネルギー的に安定した結晶構造を予測することは、固体物理学における未解決問題である。原理的には、原子の集合体に よって形成される安定または準安定構造は、原子座標の空間で定義されたポテンシャルエネルギー曲面の局所最適化問題を解くことで見つけることができる。ポテン シャルエネルギー曲面は、量子力学に基づいた演繹的計算手法である第一原理計算を通してのみ評価される原子座標の関数である。従って、結晶構造予測の 主要なアプローチは、第一原理計算と進化的アルゴリズム、粒子群最適化等のブラックボックス最適化手法を組み合わせたものとなっている。また近年、原子座標 のポテンシャルエネルギー曲面の評価を部分的に機械学習モデルで置き換えることで高速化を目指した手法も提案されている。これらエネルギー曲面の最適化に基 づいた構造予測手法は、いずれも計算コストの高い第一原理計算を繰り返し必要とするため、大規模なシステムには適用できない。一方、エネルギー曲面の最適 化に基づかない高速な手法として、既知構造の元素置き換えによって予測を行うテンプレートベースの手法が提案されている。既存研究では、構造に変化を与えな い元素の交換可能性を、事前に定義された化学組成間の距離または元素ペアの共起確率のモデル化によって評価している。本研究では、構造予測が目的にも 関わらず既存のテンプレートベースの手法では、元素の交換可能性を評価する際に構造類似性の情報が十分に活用されてない点を課題と捉え、新しいテンプレー トベースの手法を開発した。